5000番 キリリク絵
【主人公ちゃんがしーちゃんからモンブラン貰って、うわーいって食べてるんですが、口のすぐ脇にクリームがついてて、
しーちゃんが口付けてぺろって食べちゃう感じの(笑)そんないちゃラブをお願いします!】
……というリクエストを頂きました。ありがとうございますー。
描いてるうちに楽しくなり妄想が膨らんだので、ショートストーリーも添えてみました。
右左山桃さんに、捧げます。
『モンブランを朝食に』
とある暖かい季節の、日曜日の朝。
撮影から戻った紫己は自分のベッドで、スヤスヤと寝息をたてているの姿を見つける。
クイーンサイズの白い毛布を抱きかかえるように横向きで転がって、健康的なナマ足を無防備に投げだすその姿に。
紫己はとくだん驚く様子もなく、ただ「やっぱり」と呆れたようなため息をついた。
安堵の笑みを交えて――。
昨晩、父親に叱られて彼女が家を飛び出した……と、家の執事から捜索の依頼があった。
たぶん、ウチに来ている。心配することはない。
そう思いながらも朝一で現場を抜け首都高を飛ばして、らしくもなく帰路を急いだ。
憎らしくも愛しい、お姫さまの為に。
はよく眠っている。
気持ち良さそうに。幸せそうに。
紫己は羽織っていたシャツを脱いで無造作に放ると、イジワルな気持ちで東側のカーテンを開けた。
強い光が窓硝子をつき抜けて、彼女の長い髪にキラキラと反射する。
「……ふゃぁ…………」
恨めしそうに片目を開けたは、左手で光を遮りながらゆっくりとこちらに振り返った。
「…………しーちゃん……?」
起こした身体をよく見てみれば、明らかにサイズの合ってない見覚えのある男物のシャツ。
クローゼットをあさってパジャマ代わりにしたか……と、紫己は再びため息をつく。
色っぽすぎないか?
警戒心ゼロでこんな格好をするのも、どうかと思うけれど。
ココがそんな場所であることが『の特別』だとするならば、このままでも構わないか――とすぐに流される。
「おはよぉ、しーちゃん。また朝帰りだ……」
シーツにペタンと猫座りをして、は眠気眼を数度こすった。
「仕事だよ。撮影オールで、こっちも眠いんだけど」
何も問わない。諭さない。
いつもと変わらない言葉と表情で、紫己は彼女に視線を向ける。
「……しーちゃん……。あのねぇ……」
「なに?」
「……あはっ……。お腹すいちゃったぁ……」
屈託ない笑顔。
さんざん周囲に心配をかけておいて第一声がコレだから、さすがに腹がたつ。
「キッチン、行ってきなよ。今日は誰もいないけど、何かしらあるんじゃない?」
「は〜い」
紫己の不機嫌な態度をものともせず、はマイペースにベッドから飛び降りる。
……が、目敏くも机の上の小さな箱に視線をとめて、表情をイキイキと輝かせた。
「きゃあ。リオンのモンブランだぁ〜!」
彼女の笑顔をひき出す、100パーセントアイテム。
念のために――と、寄り道をして持ち帰ってきた。
「食べていい? イイよねー?」
「朝から、激甘って……」
「ふふっ。いいの〜。いっただきま〜す!」
紫己の許可も待たず、彼女は白い化粧箱を開き始める。
和栗をつかった濃厚なスイーツ。
その上品で甘い宝石に、瞳はよりいっそうキラキラとして――。
「おいしい〜! しーちゃん、大好き」
幸せそうに手づかみでモンブランを頬張る姿を見つめ、の『大好き』は、何て安上がりなんだろうと思った。
今はいい。
まだそれで構わない。
危うく脆い、2人を繋ぐ鎖。
いつか望んでも、聞けなくなる時がくるのだろうから……。
紫己は憂えて一瞬だけ瞳を伏せるが、前髪をかきあげることでソレを強引にかき消す。
そしてふわりと微笑むと、彼女の隣に胡坐をかいて座った。
「ねえ、そんなに美味しいの? 僕にも1口、ちょうだい」
背中越しに覗きこみ、ゆっくりと言葉を放つ。
「えぇ!? しーちゃんがケーキ? うわぁ、珍しい〜」
目を丸くしながら叫び、は食べかけのモンブランを差し出そうと振り返る。
唇の端にはお約束のクリームがついていた。
どれだけ子供でいれば気が済むんだよ……と、紫己は小さく声をたてて笑う。
「こっちの一口で、イイよ……」
捕まえるみたいに後ろから身体を包み込み、紫己は自分の舌でペロリと口元のクリームを舐めとった。
誰がどう思うかなんて知らない、けど。
それは愛情にあふれた、とても神聖な行為だった――。
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