銀のクサリで手足を繋いで、地下室にとじこめた。
 この世でもっとも愛しく、もっとも憎らしいあなたを。




「……どうして……こんな事を……?」




 理加は長い黒髪をゆらし、悲しげな瞳で俺をみつめた。
 冷たい床に立て膝をつき、淡い色のワンピース1枚を身にまとっただけの無防備な姿。
 ジャラッ。
 自由をもとめて動こうとするたびに、金属音が鳴り響く。
 



「ねえ、真澄くん。何であなたが、楓を裏切るの? おじ様に強制されてるなら、考えなおして……」
「関係ない」




 強い声でことばを遮り、理加の淡い期待をきりすてた。
 たしかに父は楓を消したがっている。そして次代クロスには、俺を と。
 だからあの人がこの作戦をもちかけてきた時、「嗚呼 つかえる」 そう素直に思ったんだ。




「俺はただ、のってやっただけだ」




 組織のトップになど興味はない。
 楓を葬る、どうでもいい。
 
 俺がほしいのは理加。   あなただけだった――。




「鎖をといてよ、真澄くん。人質にとった、その事実だけで十分でしょ?」




 こんな時でさえも、気丈な態度。濁らない瞳。
 地べたに這いつくばっても、どうして彼女はこんなにも美しいのか。




「できない。あなたの腕は、誰よりも知ってるから」




 そしてその優しさも。
 楓の足をひっぱると分かれば、自分を傷つけかねないだろ?




「困るんだ。今逃げられるのも、死なれるのも」




 俺は静かに呟くと、理加の首すじに口づけを落とす。
 驚いて声をつまらせ、抗うすべのない彼女に。 何度も、何度も。

 


「……やめて……」




 体を勢いよく左右にふって、必死でのがれようとしているけど。
 吐息まじりの声が洩れるたびに、俺の欲望はとめどなく引きあげられるんだ。

 ワンピースの肩ひもをすべらせる。
 露になった白い膨らみに、その頂に。赤い花が咲くまで舌を這わせた。




「……あぁ……いや……ぁ……」




 身体がビクンと大きく跳ねて、俺を睨みつける瞳がかすかに潤む。




「真澄……ちゃん……」




 もっと啼かせたい。もっと匂わせたい。
 誰も知らないカオを、いま此処で見せてくれ。
 


あなたは何の疑いも持たない澄んだ声色で
俺の名を呼んでいたけれど
本当はその度に築きあげられたこの信頼関係を
壊したかったんだ


 だから止めてなどやらない。 優しくも、しない。


Back