◆ 3.今日へのこだわり
私たちが到着した時、蒼くんは壁に背中を
預けて斜めに立ち、ただ掌をジッと見つめて
いた。
昨日、妖力者の『タマ』を拾った左手――。
一体そこに、何を思っているんだろう。
ちょっと顔色が悪い……。
そりゃそうだよね。
あれだけの妖気を浴びて、天力を使って。
二日酔いに似た気分の悪さと、激しい頭痛
で、私だったら今日1日はゆっくりベッドに
潜っていたいところ。
しーちゃんほどの経験があれば別だけど、
浄化による体力の消耗は相当なものなんだ。
まして蒼くんは自分の能力を知って、たっ
たの3ヶ月。
躯も精神も、まだ整っていないのに……。
人の出入りがこんなにも少ない夕方の正門
で、私たちが現れたことにまだ気づかない。
それが体調の悪さを、物語っている気がし
た。
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