「どう? 行けそう?」


 やっとこちらに気づいた蒼くんに、しーち

ゃんは軽く右手をあげて合図し、一言声をか

けた。


「ああ。かなりマシになった」


 体勢を立てなおして素早く視線を上げ、彼

はフッと笑顔を作る。

   

「……蒼くん、ムリしないで。別に今日じゃ

なくたってイイんだし……」


 浄化後の、本家への報告。

 2人はそのために、ウチへ寄る予定になっ

ている。


「――だね。明日にする? 別に僕も、明日

だったら予定キャンセルできるし。それでも

構わないけど?」


 しーちゃんが気遣ってそう提案した。


「うーん……」


 やはり頭痛がひどいのか、蒼くんはこめか

みのあたりを指の関節でグリグリとやりなが

ら少し考え込む。


…………が。


「あっ! でも、八純はずみは今日しかいないかも!

明日の昼には、お父さんが帰ってきて……」


 なんていう私の言葉に、すぐさま気丈な目

を向けた。


「だったら、今から行こう。……絶対に今日

がいい。今日、済ませてやる」


 天主であるお父さんか、次位という立場の

弟のどちらかと、話をする決まりになってい

るらしい。

 子供みたいに頑なな物言いをした蒼くんに、

私は思わず笑ってしまった。

   

「ふふっ。蒼くんってば、そんなやっきにな

んなくても……」


 それに対し、渋い表情で返す彼。


「……俺。の親父さん、何か苦手だ」


 隣にいたしーちゃんは蒼くんの肩を抱くよ

うに叩き、クスッと声をたてて笑った。


「得意なヤツなんて、いないって」


 
             <<前へ     次へ>>