「……しーちゃん……?」


 そこにいたのは間違えようもない、大切な幼なじみた
だ1人。
 雑誌の中みたいにビシッと決めて。
 近寄りがたいカリスマオーラ出しちゃって。
 いったい何をしているの?


「ど……どーして……ここに……」


 思わず言葉がどもる。
 しーちゃんはツカツカ近づいてくると、光のない瞳を
向けて私の左手をグイッと引いた。


「どんな事をしてでも、早乙女との結婚を阻止して欲し
い――って、言ったでしょ?」


 ……言ったよ。
 たしかに言ったけど……。
 触られた指の冷たさに、身体がビクッと震える。


「コレが僕の、唯一無二の策だよ」


 しーちゃんは静かに口元だけで笑って、掴んでいた私
の手をスルッと離した。
 ちょっと待って、状況が飲みこめない。
 頭がぜんぜんついてかない。
 ……これは……何?

 恐る恐る目にした左手の薬指には、大粒のダイヤモン
ドが光っていた。
 紛れもなくアレ。
 女の子なら誰もが夢見る、愛を誓うキラキラアイテム。
 ……でもね。もちろん。
 この状況での私には、白金の錠でしかないの。


 冗談だよね……しーちゃん?


            <<前へ    番外其の二へ>>