◆    5.『天子』な弟



   

 夕暮れの明るさが奥まで届かない、古くだ

だっ広いだけの家の居間で、それはとても

神聖な光景だった。

 畳に背筋をピンと伸ばして正座し、左手を

胸の高さで真っ直ぐ前に伸ばす蒼くん。

 その広げられた掌に少しの空間を保って、

向かい合って座っていた八純(はずみ)は、

しなやかに自分の手を重ねる。

 辺りに広がる、清冽な『気』。

 上下に合わさった2人の手の間に、私たち

にしか見えない青白い光の渦が巻いた。

 と思うとすぐ、ソレは八純の手の中に吸い

寄せられるようにして消える。



「――タマ。確かに、受け取りました」


 八純が穏やかにそう呟くと、蒼くんはペコ

リとお辞儀をして安堵の息をもらした。



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