12月24日は朝から冷たい風が吹いてい

て、夜から明け方にかけて雪の予報だった。

 もしかしたらホワイトクリスマスになるか

もしれない。

 今日という特別な日を、大好きな蒼くんと

最高にロマンティックなシチュエーションで

過ごせるかもって、私の胸は期待でふくらむ。



 仕事中も奈良ちゃんと、そんな話ばかりし

てた。

「お互いがんばろうね!」

 意味深に笑いあって定時に分かれ、迎えに

きてくれた蒼くんの腕にとびつく。



 2人だけでホームパーティがしたいと、提

案したのは私だった。

 新宿のイルミネーションを堪能してから、

ごった返すデパ地下でケーキとチキンとシャ

ンパンを買った。

「定番すぎるな……」

 彼は申し訳なさそうに笑ったけど、そんな

『普通のこと』を共有できるのが嬉しくて。

 本当に心から幸せだと感じたの。




 蒼くんの1人暮らしの家に入ったのは、引

越しをお手伝いした時以来だったと思う。

 1DKのシンプルなアパート。8帖のフロー

リングはあの日と違ってキレイに片付き、ベ

ッドとテーブルと小さな収納棚が増えていた。

 窓にかけてあるのがカーテンじゃなく、黒

いブラインドってとこが蒼くんらしい。

 清潔感のある無駄のないお部屋は、逆にど

こに座ってよいものか迷った。

「楽にしろよ」

 クッションを投げて、蒼くんが笑う。


「あはっ。こういうの慣れてなくて……。男

の子の部屋なんて、初めてだから」


 手の届く位置にあるベッドに、やたらドキ

ドキしたりして。



 テーブルの上のパソコンを移動させて、私

たちは買い物袋をほどいた。

「乾杯!」

 ジュースグラスでシャンパンを飲み、割り

箸で出来あいの料理を食べる。

 うん、おいしいっ! 大満足。

 でも手料理が並ばないのは女の子として恥

ずかしくて、来年こそは! って心に誓った。


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